苔テラリウムなので苔をメインにすべきという考え方がごく自然である。
純粋に苔だけを使った苔テラリウムは確かに素朴で美しい。
その路線は古典としてはきちんとした手法を確立すべきだとも思う。
ただ、それに固執しない進化系のジャンルがあってもよい。
可能性としては苔+アルファの進化ルートだ。
例えば苔+フィギュア。または苔+植物。だろう。
苔+フィギュアはアクアリウムジャンルの中でも苔テラリウム独特の世界観だ。
これはこれで細分化していくのも面白い。
今回私が注目したいのは苔+植物の方だ。
密閉された苔テラリウム内で苔と共に生活できる植物は限られている。
高湿で半日陰の場所を好む植物だ。
自然界を除けばその答えがわかる。
滝壺の近くの苔に沿うようにして生息する植物たちがたくさんいる。
シダ植物系と山野草系だ。
これらは苔と同じ環境下で育つため理論的には苔テラリウム内でも管理ができるはずである。
自然界との大きな違いは土壌だ。
苔テラリウムでは有機物が排除されているベースソイルを土壌として使用する。
有機物は土に分解して養分になるわけでそれがないということは根から養分を吸収する仕組みの植物にとっては死活問題とも言える。
有機物がないと植物系のものは生きられないのか?
そればかりは実験をしてみないと分からない。
私はいくつかのシダ植物と山野草を小瓶レイアウトに移植した。
植え替えてから一年。
今も問題なく緑の姿をキープしている。
ただ限られたスペースなので葉がガラス面に触れるくらいの大きさになることがあり、そうすると葉が茶色く変色して落ちるようだ。
つまり、どういうわけか、植物たちはこの限られたスペースの中で体の大きさを調整しながら生きている。
よくできた仕組みだ。
この結果だけ見るとベースソイルに養分がない点に関しては思いの外問題はなさそうだ。
最低限の与えられた水と光を使ってこの環境に適した生長を見せてくれる。
むしろ養分を与えると大きくなりすぎてしまうのでこの環境には適さない。
しかしながら水の与えすぎでの根腐れや、種類に応じての環境管理などが必要なので植物系を入れるのは上級者向けではあることに間違いはない。
苔だけの苔テラリウムをうまく育てることができるようになったらいつか挑戦してみると良いと思う。
苔テラリウムの新たな可能性を探るためにシダや山野草の活用を考えていきたい。