〜三千院、苔楽地蔵、そして仲間との時間〜
三千院で出会った「心の原風景」
家族で京都を訪れたとき、私はどうしても立ち寄りたい場所がありました。大原にある三千院です。
苔を愛する私にとって、三千院の苔庭はずっと憧れの場所でした。家族も私の趣味を理解してくれていて、「苔を見たい」という目的も自然に受け入れてくれていたように思います。
庭に足を踏み入れた瞬間、目の前に広がる苔の美しさに心を奪われました。丁寧に整えられた苔は、深い緑の絨毯のように境内を覆い、まわりの空気を静かに、やさしく包み込んでいました。
その苔庭に、いくつものお地蔵さんが静かに佇んでいました。
どのお地蔵さんも柔らかい表情をたたえ、苔とともにそこに「在る」ことの美しさを教えてくれているようでした。
私はその中の一体を、じっと見つめていました。
「ようやく、会えた。」
実は私の活動「苔楽(こけらく)」で使っているロゴは、この三千院のお地蔵さんの写真からインスピレーションを受けてデザインしたものでした。
その存在を写真でしか知らなかった私にとって、実際にそのお地蔵さんを前にしたときの感動は言葉にできないものでした。
まるで、長いあいだ思い続けてきた誰かに、やっと会えたような気持ちでした。
「このお地蔵さんをロゴにして本当に良かった」
心からそう思いました。
この出会いをきっかけに、私はこのロゴのお地蔵さんを「苔楽地蔵(こけらくじぞう)」と名付け、自分の心の分身として大切にするようになりました。
それ以来、苔楽地蔵は私の活動を静かに見守り、支えてくれる存在となっています。
発信がもたらした出会い
苔楽地蔵とともに苔の活動を続けていたある時期、私はYouTubeを通じて苔テラリウムづくりや苔の魅力を発信し始めました。
趣味として始めたものでしたが、少しずつ動画を見てくださる方が増え、コメントや反応をいただく機会も増えていきました。
マルシェに出店する機会も多くなり、ある日、来場者の方から声をかけられました。
「YouTube見てます!」
突然の言葉に驚きながらも、嬉しい気持ちがこみ上げました。
芸能人になったような気分で、嬉しいけれどどこか照れくさい、不思議な感覚を覚えたのを今でも覚えています。
発信をしていると、知らない相手との距離が自然と縮まります。
相手は私のことを動画を通じて知ってくれているから、初対面でもすぐに話が通じる。
そんな体験を通して、人とのつながりが広がっていくのを感じていました。
K2工房さんとの初対面
その頃、東海市でマルシェに出店していたときのことです。
「K2工房さん」という方が私のブースを訪ねて来てくれました。彼もYouTubeで苔やものづくりについて発信しており、私は以前からその活動に関心を持っていました。
「いつかお会いできたら」と思っていた方と、思いがけず直接会うことができた喜びは大きなものでした。
その日は終始、YouTubeや苔の話で盛り上がり、共通の趣味を持つ者同士の会話は尽きることがありませんでした。
趣味を通じて自然につながる――その心地よさを改めて実感した日でした。
ヒロシックスさん、そして広がるご縁
また別の日、「ヒロシックスさん」という方が近くでマルシェに出店すると知り、私は仕事を途中で切り上げて会場に足を運びました。
SNSでは以前からつながっていたものの、リアルで会うのはこれが初めてでした。
そこには「苔男子まこさん」や「コケたコケキファミリー」など、他にも苔を愛する人たちが遊びに来ていて、自然と交流が広がっていきました。
今思えば、この日をきっかけに、私の交友関係は一気に広がっていったように思います。
その後、私たちは一緒に苔観察に出かけたり、マルシェやイベントに参加したりと、苔を通じてさまざまな活動を共にするようになりました。
苔テラ小屋で感じた一体感
仲間とのつながりを強く感じたのは、ヒロシックスさんが企画した「苔テラ小屋」というイベントです。
古民家を活用した苔や苔テラリウムに関するクリエイター出店イベントで、準備から運営まで、みんなで力を合わせて進めました。
このイベントでは、苔テラリウム作りだけでなく、オリジナルのフィギュア作り体験や、苔スタンプを袋に押してもらうなど、参加者が楽しめる工夫がたくさん盛り込まれていました。
それぞれが持ち寄ったアイデアが形になり、訪れた方々に喜んでもらえたことが何より嬉しかったです。
ものづくりが好きな仲間たちと、一つの空間を作り上げる。
その過程にある楽しさや充実感を共有できたことは、私にとって大きな経験となりました。
自然体で出会えた仲間たち
これまで出会ってきた仲間たちとは、無理に関係を築いたわけではありません。
ただ好きなことを楽しむ中で、自然とつながっていった方ばかりです。
趣味を通じて出会った人とのご縁は、心地よく、そして長く続いていくものだと感じています。
今、私が苔楽の活動を続けられているのは、そうした仲間たちがいてくれるからこそです。
苔楽地蔵は、その出会いや感謝の気持ちを象徴する存在です。
これからも、苔とともに歩みながら、自然なつながりを大切にしていきたいと思います。