小瓶のような限られたスペースの中に苔を植えて自然の風景でありながらインパクトを残すにはどうしたら良いかを考えてみた。
誰もそれを定義していないこともあり、そこには決まりなどはない。
しかし、たくさん苔テラリウムを作っていると自分なりの法則が出来ていることに気づく。
せっかくなのでこのブログを見てくれている方々にその法則を公開しようと思う。
自然界から学ぶ
まず最初に言えることは自然の風景を見て模倣するのが一番の上達の早道だということだ。
自然界の姿からレイアウトを習い、自分なりに解釈してそこで感じたことを苔テラリウムに再現する。
そのためにはどのように木々が成長し、そこに根付き、情景を作っているのかをじっくりと観察する必要がある。
本当は実際に山に行き観察をするのが一番良い方法だと思うが、なかなかそれができない人は山の写真をお手本にするといい。
今まで見えていなかったことがきっと見えてくることだろう。
苔テラリウムと盆栽の違い
話は変わって苔テラリウムと盆栽の明確な違いは何か。
ガラス容器に植えるのが苔テラリウムで鉢に植えるのが盆栽?
それもそうだと思う。
ではレイアウトについて絞って考えたらどうだろう。
私の考えた答えは次の通り。
主役になる個体をレイアウトに用いないのが苔テラリウムであり、それが盆栽との違いである。
苔テラリウムには主役になる松やヒノキや楓などの樹木は基本使わないのだ。
それでも情景として成り立っているのはなぜだろう。
それは脇役的な苔の存在感を全体的な風景として楽しむものだからだ。
盆栽と苔テラリウムがあきらかに違うのはこの点だと思っている。
フィギュアは主役か?
苔テラリウムには主役となる樹木は無いがテーマとなるフィギュアを入れる場合がある。
好みにもよるが私は極力フィギュアに頼らず脇役の苔を愛でる作品を作りたいと思っている。
もし、フィギュアを使うことがあっても苔があるからこそ引き立つフィギュアを選定し、苔のある風景の中にはさりげなく入れるようにしようと心がけている。
そういう観点から苔テラリウムにおけるフィギュアは主役ではなくテーマのヒントとなるアイテムくらいの位置付けで風景に溶け込ませるくらいの存在感にとどめておいた方が、私の好きな苔テラリウムらしさになると考えている。
苔の配置の仕方
ではどのように苔を配置したらいいのか改めて考えてみよう。
まず、私が気をつけていることは苔を植えすぎないこととたくさんの種類を使いすぎないことだ。
自然界でも言えることだが、ある一部の景色にはそこに根付いた限られた種類の植物しか生息していない。
その自然界を小さな容器に再現するのだから沢山の種類の苔を詰め込むだけ詰め込んでしまってはかえって不自然である。
私はいつも「地面を覆う背の低い苔」と「空間を埋める背の高い苔」、「アクセントとなる特徴のある苔」のように三種類に分類して苔の配置を考えている。
それぞれの分類ごとに一〜二種類の苔を使う程度である。
沢山の種類の苔を計画性もなくただ植え込むと統一感を失い、チグハグな印象を与えてしまう可能性が高いからだ。
先程上げた分類を元に、石やソイルで組み上げた土台のどこにその分類が該当するのかよく検討する。
容器を目線の高さに上げたり、上から覗き込んだりしながら考える。
そして配置が決まったら背の低い苔から植え付けていく。
背の低い苔を植え付ける
私がいつも使う背の低い苔はホソバオキナゴケやタマゴケ、カモジゴケなど。
背の低い苔は全体をほぼ覆うように植えるが、配置した石のデコボコの表面や化粧砂でかたどった部分などは苔で覆わずよく見せるように気をつける。
また、石とソイルの境目の部分や化粧砂のラインなどをそのまま見せてしまうと人工的に作られたような印象を与えてしまうため、境目には背の低い苔をさりげなく入れてラインをぼかすようにしている。
背の低い苔を最初に植え込む理由は他に障害がないうちの作業になるため植え付けやすい点と、丁寧に植え付けようとするとかなり細かい作業になることが分かっているので大変なところは最初に終わらせておきたいという感情的な部分だ。
苔と苔の間に不自然な隙間が空いていないか確認し、そこを苔で埋めたら仕上げ作業完了である。
背の高い苔を植えつける
背の低い苔を植え付け終わったらまた全体を良く観察し、次は背の高い苔を植え付けていく。
背の高い苔に最適なのは私が一番好きな苔でもあるヒノキゴケだ。
植え付ける際は何も無い場所、つまり、空間として隙間が空いているところを立体的に埋めていくような感覚で配置を考えると良い。
細かい話だが、その空間を全て埋め尽くすのではなく少し余白を残すのもテクニックのひとつだ。
空間が空間として存在する意味を強調することができるからだ。
これは盆栽にも共通するのかもしれないが空間をいかに格好良く見せるかを気にすることで仕上がりに大きな影響が出ると感じている。
瓶の中いっぱいに苔が詰まっているよりも情景を表現するなら木漏れ日が落ちるような空間を残すことも大事なので意識してみよう。
植え付ける位置は、同じ種類の苔をパラパラと散らかすのではなく二、三ヶ所に分けて、数本の苔の束になるように植えると見栄えが良い。
自然界では同じ種類の植物が寄り添うようにまとまって生息していることも多いので、それに習って配置することでより違和感のないレイアウトになる。
特徴のある苔を植え付ける
最後にインパクトのある特徴的な苔を目立つところに植え付ける。
実はこの分類はあってもなくてもいいとも言える。
しかし、作品として作るのであれば何を見せたいかという作者の主張も盛り込むべきだと考える。
その考えからすると、アクセント的に他とは違う苔を使うのは有効的だ。
それは一箇所でも良いし、その苔テラリウムのテーマとなる苔なら数カ所に分けてイメージカラーとして植え付けても良いと思う。
もちろん選ぶ苔はその環境に適した苔を選ぶことは忘れてはならない。
ちなみにこの特徴のある苔の代わりに私は最近シダ植物を使うことがある。
レイアウトの縮尺は大きめにはなるがシダ植物のインパクトは絶大である。
実際、自然界では苔とシダは共生しているので苔テラリウムにも馴染むアイテムなのだ。
まとめ
ここまで私の意識している苔の配置について公開した。
もし苔テラリウムクリエイターの方で他にもご意見があれば是非聞いてみたいところである。
あくまで個人的な意見をざっくりと書いたので参考になるかは分からないが是非今後苔テラリウムを作る時には試して欲しいと思う。